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新商品の開発に取り組み始めたばかりの入社2年目の如水庵の社員たち。「筑紫もちに並ぶヒット商品を」と意気込む=2024年9月12日午後0時49分、福岡県古賀市、松本江里加撮影

 創業100年を超える企業でも、伝統を守るだけでは生き残れない時代。そんな老舗にも、若手社員の発想や意欲を引き出すことで、新商品の開発や市場開拓を実現している企業がある。(松本江里加)

 少なくとも江戸時代末期には菓子屋を営んでいたと伝わる「如水庵」(福岡市)。「筑紫もち」で知られる老舗だが、新商品開発にも力を注ぐ。

 9月中旬、福岡県古賀市の営業本部。来年6月に売り出す新商品をめぐり、社員6人が意見を交わしていた。

 この6人が入社したのは昨年春。同社は入社2年目に、1年を通して商品開発に取り組む研修を2021年から続ける。

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きなことあんこが入ったもなか「もなこ」の開発経緯を後輩らに話す如水庵の高野峻太さん(左から2人目)=2024年9月12日午後0時21分、福岡県古賀市、松本江里加撮影

 きっかけはコロナ禍だった。経験を積みにくい状況下で、仕事の楽しさを感じてもらおうと人事担当が提案した。

 普段は県内各地の店舗や生産工場で別々に働く同期が月に1度、顔をそろえて、どんな商品をめざすか話し合い、試作を繰り返す。直近では今年2月、22年入社の9人が開発した「うめみづき」が実際に販売された。

 寒天と砂糖でつくる琥珀(こはく)糖をベースにした、半透明で一口サイズのお菓子。新古今和歌集の1首をもとに、紅白の梅の花や月をモチーフにし、包装や売り出し方も9人で練った。手間ひまがかかるため1箱で税込み1296円と決して安くない金額設定だが、9店舗で10日間、限定販売すると、ほぼ完売した。午前に1日の予定数を売り切った店舗もあった。

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期間限定で販売した如水庵の「うめみづき」=同社提供

 その9人の一人、営業部に勤務する菅原優花さん(25)は「話し合う中で、お菓子を少しずつ食べるか一気に食べるかなど、感覚の違いにも気づいた。社員同士で考えを共有する大切さに気づき、お店のイベントでも積極的に意見するようになった」と振り返る。

 技術部開発担当の後藤由美さん(37)は30回近い試作で9人を支え、大きな成長を感じた。「最初の頃と表情が変わり、『こっちを先に仕込んだ方がいいですか』と自ら考えて行動できるようになった」と語る。

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